脳卒中(症例その1)
30年も昔の元戦友の話です。そのころ私は会社から研究生として、京都の大学に派遣されていました。
産学協同の盛んなころです。その同じ教室にKさんもほかの会社から派遣されており、彼は大学院の
博士課程に在籍していました。最初は態度のでかい奴と敬遠していましたが、気さくなところがあり、
すぐに好感を持つようになりました。
彼は人付き合いがよく、仲間と酒を飲んだり、麻雀をしたりしていました。彼は若いころから野望があり、
将来の社長を目指していました。ただ、自分の健康管理には無関心で、会社の健診で高血圧と胃炎があると
言っていました。まだ20代のころです。
その後、私も彼も派遣元の会社にもどり、20年を経て東京で再会しました。彼は相変わらず精力的で
世界をまたにかけて飛び回り、同時に社内営業で、好きでもない酒を毎日のように飲んでいました。ただ、
健康面は問題があり、高血圧で肝臓に異常があるといっていました。忠告したかったのですが、人の話に
耳を貸すタイプではないので、何も言いませんでした。
そして、48歳のころ(私も同年齢)、彼は、最年少で取締役に昇進し、400人の部下を持つ、研究所
の所長に出世しました。社長への道は順調に見えました。そして、その直後、彼の会社の営業マンから
私に連絡がありました。脳出血で突然死したというのです。
彼の葬儀は今まで参列したどの葬儀より悲惨なものでした。奥さんとお母さんが葬儀の間中、大声を
あげて、泣いていたのです。
自分の健康を過信してはいけません。彼の夭折の芽は、すでに20代のころにあったのです。私は医者嫌い
ですが、自分の健康除隊には細心の注意を払っています。彼に私の半分でもその心構えがあれば、まだまだ
元気でいられたに違いないと思うと、とても残念でなりません。