IPRの同窓会
今から30年以上も前のことだ。会社員だった私は会社からの指示でIPRのセミナーに参加した。IPRとはインターパーソナルリレーションの頭文字を
取ったもので、日本語に直せば人間関係ということになる。会社というものはいろいろな性格の人間の集合体なので、人間関係に
悩まされる人が多い。当時、私自身は特に人間関係に悩んでいるわけではなかったが、直接上司の社長の性格には悩まされていた。ところが、
社長は私が部下を掌握できていないのが問題と考えていて、そういうセミナーに参加させたのだ。
結果論としてこのセミナーは私を当時の会社から退職させるきっかけを作った。IPRでは次の三つのことを学んだ。1.人を大事に
するとは人の感情を大事にすることだ。2.人と話をするときは相手の目を見て話すことが大切だ。3.人間関係では気が付くということが
とても大事なことだ。
当時、私は十分かどうかは別にして、食べて行くには不足のないだけの収入を得ていた。けれども、収入が多いことと、大事にされていることは
全く別の問題であり、全く大事にされていないことに気が付いた。それで、前後も十分に考えないままに、すぐにその会社を辞めた。
当時の上司であった社長は私の感情を大事にするどころか、虫けらのようにもてあそんでいたことに気付いたからだ。
そして十分な準備もしないままに、独立して、今の会社をつくり、第二の人生に乗り出した。幸いその気になれば何とかなるもので、
小さいながらも同じ会社を30年間続けている。もうすぐ80歳になるので、体力のほうは衰えが目立つが、精神力はまだまだ活発で、
何とか自分の目の黒いうちに、自分の会社を世間で名の通った会社にしたいという願望は捨てていない。これもIPRのセミナー
に参加させてもらったおかげである。その意味では、当時の会社の社長に感謝すべきかもしれない。残念ながらすでに故人となった
その社長への感謝の念は殆どわいてこないけれど。
さて、IPRセミナーの参加者のうちの5~6人のメンバーとはいまだに年賀状の交換がある。あれから30余年、私の発案で当時のメンバー
の同窓会を考えた。IPRセミナーの参加者はほぼ全員が人間関係に悩みを抱えていて、自分の性格を改善したいと思っていた。私などは
悩みが最も少ないほうだった。5人は集まると思って連絡したが、一人は仕事の都合で断りが来、一人は返事がないままだ。またぞろ
家庭か仕事かでIPRに悩まされているのではないかと思うと、少し心が痛い。IPRに悩む人間は年を経てもなかなか悩みから抜け出せない
もののようだ。